05/08/2026
【 雑感 – My Musings 】File.10
Everyware(エヴリウェア)
─ つい使ってしまう、いつもの器
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(はじめに)
若かった頃の話です
皇室に、自社の器を納品した事のあるという
とある窯元の社長と、お話させて頂く機会がありました
今から思えば、とても贅沢な経験だったのですが
その時語って頂いた苦労話は、今でも覚えています
器が完成すると、宮内庁の担当者が検品に来るそうなのですが
その合格ラインが、とんでもなく高くて
通常なら 全然OKのところでも、
厳しくジャッジ されてしまうそうなんです
精緻な器を手作りで量産する、
とても高い技術をもった窯元なんですよ!
そんな窯元の技術力をもってしても、
皇室に求められるクオリティには、とても苦労したと
懐かしそうに語られる 社長さんの姿は、今でも忘れられません
こうして 無事に納める事の出来たハイレベルな器も
皇室の方にとっては「日常食器」
──という事になるのでしょうか
無論、この結論は僕の空想でしかありませんが
どんな人にも、暮らしの食事があるのなら
そこには必ず「日常食器」がある
そう気付かせてくれる体験でした
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月日は流れ
僕も独立し
自分の仕事を、模索しています
今、新しい粘土のテストをしていて
その粘土で作った器を、試験的に使っているんですね
強度の具合とか、レンジはOKかとか、
食洗機は大丈夫か、とか
そんな実用面をチェックする為なのですが
なんかいいんですよね
使うのが楽しい
テストという目的を除いても、ついつい使いたくなっちゃうんです
僕の食器棚は、自作の器が殆どで
昨年の大掃除で、かなりの数を絞ったのですが
それでも、よく使う器と、そうでない器の、“なんとなく”の選り分けがある
その基準は、どうやら使い勝手だけではないようなんですね
File03で僕は、
骨董商さんの「(この器)なーんか知んないけど、使っちゃうんだよなあ」
という一言をご紹介しましたが
僕が自作の器を使う場面でも、そんな事があるんだなあ、と
試作の器を使いながら、思ったのでした
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「衣食住」という言葉がありますよね
日常食器は「食」に当てはまるでしょうか
「食器」は料理を盛るための道具ですから
「食」と「食器」は、切っても切れない関係
誰もが納得する事でしょう
でもその裏に、もうひとつ大切なワードがあると、僕は思うのです
それが「家事」
「家事」もまた「食」とは表裏一体の関係
切っても切れない間柄なのでは、ないでしょうか?
食事には調理が必要ですし、食後は後片付けが待っています
その中間に、「食器」があるんだと思うんですよね
家事は煩わしいものです
そのど真ん中にある食器が、煩わしさを助長させてはいけません
なので使い勝手は、日常食器に求められる大切な要素なのは、間違いないでしょう
ですが、それだけでは割り切れないものがある
それが「人」と「器」の関係なんですよね
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「この器に合うのは、どんな料理なのかしら」と、献立が楽しくなる器があります
忙しい合間にあっても、これで食べたいと思える器がある
食事が空腹を満たすためのものなら
すべての器は、実用一辺倒でもかまわないでしょう
ですが「食事を楽しむ」という言葉があるように
日々の食事には、コスパやタイパだけでは割り切れないものがあります
「食」と「食器」が切っても切れない間柄なのなら
「使う事自体が楽しい」という感覚も
器には必要な要素なのでしょう
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僕はこれまでに
「Default Ware(デフォルトウェア)」と言う言葉を、繰り返し使ってきました
暮らしの“めんどう”を、 “たのしさ”に変える
そんな器を作りたい
そんな願いから生まれた言葉です
これは、僕自身に向けられた言葉
作り手である僕の「軸」であり、「道標」となる言葉なのです
ですが弱点もあります
単体では成立しないのです
この言葉の先にある
使い手さんの事が語られなければ、
ただの自己満足になりかねない
いわば天秤の片側なんですね
──Everyware(エヴリウェア)──
造語です
「つい使ってしまう、いつもの器」という意味です
作り手がDefault(デフォルト)を目指して作った器は
使い手さんの元へ届いたとき、はじめて「いつもの器」へとバトンが変わる
僕にとっての最終的な理想が、ここにあるのです
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(おわりに)
日常食器とは、窯から出た時がピークでもなければ
お店に飾られている時が、最上でもありません
市井の暮らしの
家事と食事の間に入った時に
初めて、その本領が発揮される
それが日常食器なんだと思います
つい使ってしまう器は、やがて時間さえも超える事でしょう
暮らしの中の「あったらいいな」を具現化してみたら
いつの間にか
「いつも使っている器」になっていた
作り手として
この感覚を大事にする事が
使う人にとっての
「Everyware(エヴリウェア)」に
つながるのだと思うのです
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